頭痛本「片頭痛」からの卒業の紹介

みなさんこんにちは、サノです。

本記事では、埼玉国際頭痛センター長である、坂井文彦先生の
「片頭痛」からの卒業
をご紹介します。

「最近、片頭痛の回数が増えている気がする。」
「鎮痛剤を飲み過ぎてる気がする。」
「片頭痛の対策法が知りたい。」

そんな方におすすめです。

片頭痛発生について

片頭痛発生の流れ

片頭痛を改善するためには、どのように片頭痛が起こっているのかを、知っておく必要があります。
まずは片頭痛が、どのような流れで発生するのかについて、本書に書いてあることをざっくり解説していきます。

  1. 体のリズムや環境の変化
  2. セロトニンの消費と枯渇
  3. 三叉神経の興奮
  4. CGRP放出
  5. 血管拡張、炎症
  6. 片頭痛発生

このように、ストレス、ホルモンバランス、生活習慣、天気など日常の様々な変化が片頭痛の誘因となってきます。
平日から休日に入る場合なんかもそうですね。

セロトニンはこのような変化から、心と体のバランス、リズムを支えるため、日々働いてくれています。
しかし、心と体が休まり、脳がホッとするとセロトニンの放出を止めてしまいます。

すると、セロトニンにコントロールされていた三叉神経が勝手に活動を始めてしまいます。
そして、三叉神経から、頭痛を引き起こす物質であるCGRPが放出され、これがもとで
片頭痛が起きてしまうのだそうです。

ここで「セロトニンを注射してしまえば良いのでは?」と思う方もいるかもしれません。
実は既にそのような試みはあったようです。その実験では、確かに片頭痛は良くなったようなのですが、副作用が多すぎる、という残念な結果に終わったそうです。どうやら注射すれば直るような、そう単純な話ではなかったようです。

では、何がセロトニンの放出を止めてしまうのでしょうか。
まだ確定はしていないようですが、視床下部という部分が、有力だということです。
視床下部は、セロトニンだけでなく、自律神経やホルモンなど、多くの脳内物質をコントロールしています。
これを見ると、あらゆる変化が片頭痛の誘因になり得るというのも納得できます。

週末頭痛

片頭痛は週末に起こる人が多いようです。実際に、著者のところにもそのような悩みを持つ患者さんが、数多く来ているそうです。
週末頭痛の原因は、前述のとおり、セロトニンが枯渇してしまうことです。
セロトニンの枯渇を防ぐために、著者は週末リフレッシュ作戦というものを、おすすめしています。

週末リフレッシュ作戦とは、簡単に説明すると、ダラダラせずに活動的に休日を過ごしましょう、というものです。
二度寝や寝過ぎは禁物です。休日は休日は爽快な気分で運動をしましょう。
本書では、散歩、ヨガ、太極拳をおすすめしています。

慢性片頭痛に気を付けて

慢性片頭痛とは

慢性片頭痛は、片頭痛が慢性化した状態です。週に2~3回、片頭痛が起き、片頭痛でない日も緊張型頭痛に似た頭痛が起きる、というものです。
近年では、この慢性片頭痛が増えてきているということです。

慢性片頭痛の原因

痛みマトリックス

ここは少しややこしいので、簡単に説明すると、痛みマトリックスとは、脳に痛みを記憶する回路が形成されてしまう、ということだそうです。
痛みを記憶するだけでなく、慢性化すると痛みを記録する回路が成長し、そこから脳のあちこちに痛みの信号が送られるようです。
これにより、片頭痛が起きていないときでも、痛みを感じてしまいます。古傷が痛む、というイメージで良いと思います。

痛みが記憶される→呼び起こされる
このようにして、片頭痛の頻度が雪だるま式に高まっていき、慢性化してしまいます。

薬物乱用

名前の通り、痛み止めの飲みすぎによるもので、市販の鎮痛剤、トリプタン製剤のどちらも当てはまります。
痛み止めの飲み過ぎは、脳の痛みの調節系(セロトニン・エンケファリン)の機能を低下させ痛みを起こしやすくしてしまいます。
痛み止めを使うことで、脳が自分は働かなくても良いと勘違いして怠けるのです。
さらに言うと、調節機能が働かないと、痛みに敏感になってしまうようです。

痛み止めの飲み過ぎ

痛みの調節機能の勘違い

痛みに敏感になる

痛み止めを飲む

このようにして、片頭痛が悪化し、慢性片頭痛になってしまうケースが、非常に多いそうです。
対処法は、薬の頻度を減らすしかありません。場合によっては、入院することもあるそうです。

頭痛ダイアリーをつけましょう

本書では、頭痛ダイアリーをつけることを強くおすすめしています。

片頭痛は、人それぞれ症状が違います。
頭痛ダイアリーは、お医者さんが患者さん一人一人の、片頭痛の書類を判断する手助けになるそうです。
また、薬をどのタイミングで飲んだか、何を飲んだかを記録していれば、自分の薬の服用量を把握できます。
薬の服用量を具体的に把握することで、薬物乱用による慢性片頭痛を、避けることができるかもしれません。

また、家族や周りの人に頭痛ダイアリーを見てもらうことは、片頭痛への理解に繋がります。
実際に本書では、頭痛ダイアリーを見せることで、誤解が解け、片頭痛治療に協力的になってくれている事例が紹介されています。

片頭痛は改善できる

片頭痛の遺伝について

片頭痛は、遺伝で受け継がれるということは、他の記事でもご紹介したと思います。
しかし、片頭痛持ちの遺伝子を持った人全員に、片頭痛が起こる訳ではないようです。
片頭痛は、遺伝子とストレス、環境の変化、生活習慣の乱れなどの条件が重なったときに起こるもだそうです。
このような遺伝を、多因子遺伝というようです。
高血圧、糖尿病、動脈硬化と同じようなもので、食事療法や体質管理で防ぐ、または治せる可能性があると筆者は言っています。
そのためにも、頭痛ダイアリーなどで、自分の片頭痛の誘因を探ることが重要です。

また、本書には片頭痛を自分で起こすことのできる人物が登場します。
それほど詳しい解説は、ありませんでしたが、自分の片頭痛の起こりかたを知り尽くした結果、片頭痛を自ら起こせるようになったそうです。

片頭痛予防体操

片頭痛予防体操は頭痛女のバイブルという本でも、紹介されていました。
本書でも、全く同じものが紹介されています。
ただ、片頭痛予防体操の考案者が、著者である坂井先生だということなので、もう少し詳しく説明します。
片頭痛予防体操は、頭と首を支えてくれている筋肉をストレッチし脳に良い信号を送ることで頭痛を予防してくれます。

手順

  1. 足を肩幅に開き、正面を向く
  2. 肘を胸の位置まで上げる
  3. 肘を曲げ、肘から手の先までを人面と水平にする
  4. 頭は動かさず、両肩を大きく回す
  5. 肩を左右に90度まで回転させて戻す
  6. これをリズミカルに2分間続ける

できれば毎日やった方が良いようです。

片頭痛予防体操が効く理由

前述したとおり、片頭痛が慢性化し、痛みを記憶する回路ができると、脳のあちこちに痛みの信号が送られます。
それに伴い、後頭部の髪の生え際のあたりに、圧痛点という、ゴリゴリとしたしこりのようなものが、できるのだそうです。
普通のコリは押すと痛気持ちい程度なのですが、圧痛点の場合は押すとすごく痛みます。
著者いわく、圧痛点は痛みの信号を探知する窓口になっているということです。
片頭痛予防体操は、この圧痛点を刺激し、脳に良い信号を送ることで、片頭痛を予防してくれるのだそうです。

補足情報

患部を冷やすはちょっと注意

片頭痛の時に患部を冷やすという対処法は、世界的にもよく行われる対処法です。
冷やして片頭痛の進行を阻止する、冷刺激で痛みを紛らわすことが狙いです。
私も、昔から痛みが出たときには何となく冷やしていました。
個人的には、夏は気持ちが良いので、眠りに入りやすくなる、という理由もあります。

まあそれは置いといて、実はこの対処法には注意点があります。
片頭痛が起こっているとき、光や音に敏感になることはみなさんも、既にご存じかと思います。
この時、皮膚感覚も敏感になっていて、髪をとかすだけでも痛みを感じる人がいます。
この痛みは異痛症(アロディニア)と呼ばれています。

つまり何が言いたいのかというと、冷たい刺激で痛みが増幅しまっている可能性もあるということです。
冷やすとしても、様子見ながらやっていった方が良いかもです。

チョコレートが片頭痛に悪いわけじゃない

チョコレートやワインが片頭痛に良くないという情報は、いろいろなところで目にします。
しかし、今のところ片頭痛に対する食べ物の影響で、信憑性があるものは、空腹が悪いということだけだそうです。
著者が言うには、空腹でチョコレートを食べるから、チョコレートが片頭痛の誘因になっているように見えている、ということです。

ワインの場合も、ポリフェノールが誘因になっているのではなく、実はチラミンという物質が血管に作用するため、片頭痛が起きているというのが定説のようです。

片頭痛に対する考え方

アメリカ
片頭痛は治療すべき病気であり、会社の上司に連絡するとすぐに休む許可がもらえるようです。

日本
仮病扱いされることが多く、会社はまず休むことはできません。
このような悩みを持った患者さんはとても多いようです。
本書は2018年に出版されたものなので、現在はどうなのか分りませんが。

周りの環境が本当に辛いようなら、早いうちにアメリカに逃げる準備をした方が良いかもしれませんね。

まとめ

本記事では、「片頭痛」からの卒業という本をご紹介させていただきました。
内容としては、なぜ片頭痛が起こるのか、どうしたら頭痛を改善できるのかについて解説してきました。
しかし、細かなところを省くと、我々がすぐにできることは、

  • 頭痛ダイアリーをつける
  • 片頭痛予防体操をやる

この2つです。
頭痛ダイアリーをつけ、片頭痛の傾向や、何が片頭痛の誘因になっているのかを見極め、
片頭痛予防体操で脳に良い信号を送り、片頭痛を改善していきましょう。

もっと詳しく知りたい方は、是非本書を手に取ってみてください。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

参考文献
坂井文彦(2018)「片頭痛」からの卒業.

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